怖い話前編

幽霊を見たことある．たぶん．子供の頃から何度か見ている．何度もじゃなくて数回．十数回かな．

ただ，怖い幽霊を見たことは一度も無いんだ．幽霊ってさ迷っているというか漂っている．それで，見たい時に見るんじゃなくて，心に何もない時に目に入るんだ．

3例あげる．子供で養護学校の療養所にいた時に，その高さでは立てない位置を看護婦さんが通った．廊下の高さで，その廊下の外を通っている．最初は誰だと思って，次に幽霊だ．俺は叫んで部屋に入った．でも，怖い幽霊ではなかった．この養護学校は大戦の当時に結核の療養所だったりして，亡くなった人は多いらしい．看護婦さんも病気になって亡くなった方なのかなという話をした．学校の先生が言ったんだけど，そういう幽霊を見る人は霊能者になれるんだって．見て欲しいという怖い幽霊を感じて見てしまうのは当然で，何もなく見てしまう人が訓練して意識して見るというのが，霊能者なのかな．なんだか間違えてるかな．良くおぼえていないのに書くのも何だな．

次，会社に入って，対面の同僚の背後を小さな男の人が，俺の方を見て素通りした．透けていた．これは，あっ幽霊が通ったと口に出した．同僚は怖いことを言うなと話したけれど，怖い幽霊ではなかったので，同僚に関係ある人なんだろうなぁ．守護霊とか．この小さな幽霊というのは，テレビ番組でタレントさんが小人の幽霊の話をしていたことがあって，それに同意をした．

一番最近の幽霊は，在籍中に亡くなった次長さんだろう．新しい社屋が出来た頃に，気配を感じて振り向くと，その方はぼーっと立っていたんだ．非常階段の扉が開いていてすぐ外に立っていた．作業服ではなくジャケットとネクタイ．それにスラックス．通勤して来ましたみたいな感じ．これは同僚に幻覚だと言われたのだけれど，幽霊を感じて，着ている服のイメージをしているかも知れないと思った．ただ，眼鏡とネクタイがその亡くなった次長さんだった．だと思う．この日はお盆だったか．少し様子を見に来たんだろうな．そういう話をしたのが印象で憶えている．

この話は後編に続く．